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最高裁判所第一小法廷 昭和31年(あ)3543号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人宮沢邦夫の上告趣意第一点は、違憲をいうが、結局原判決は第一審判決が昭和三〇年一二月一日附の起訴状記載の窃盗の公訴事実を被告人の公判廷の自白だけで有罪とした点を職権調査しないでこれを看過したというに帰する。しかし、仮りに所論の被害顛末書が補強証拠にならないとしても、第一審判決は被告人の公判廷における自白を採って所論公訴事実を認定したものであるから憲法三八条三項に違反するものではないこと、並びに、第一審判決に控訴趣意書で主張しなかった違法があり、これを控訴審で、職権により調査発見しないで看過したとしても原判決に調査義務に違反した違法があるといえないことは、当裁判所の屡々判示したところである。されば、所論は、結局刑訴四〇五条の上告理由に当らない(なお、所論顛末書は、被害物件の保管場所、保管者、保管状況等を詳述し、被告人の公判廷における自白を補強するに足りるものと認められる)。同第二点は、量刑の非難で、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

よって同四一四条、三八六条一項三号、一八一条一項但書により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 真野毅 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫)

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